ニッチすぎる、大学教授たちの悪ふざけ、『失われたドーナツの穴を求めて』感想。

こんな人におすすめ

  • 変わった本が好きな人
  • 個性を出したい人
  • 勉強が好きな人

 

本好きとして本屋さんをめぐるなかでつくづく思うことは、「世の中にはいろんな本があるなあ」ということで、特に小さな個人書店なんかではなんだこりゃ、という本がコテンと置いてあったりするもんです。

 

僕が好きな、ニッチ過ぎる本。

 

この本、「ドーナツの穴」について、あらゆる学問の研究者があらゆる角度から追究した本。

「ドーナツの穴」がテーマの本て。本屋で目を惹かれ、衝動買いでした。

 

目次がコチラ。

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・・・ワクワクしませんか。

 

 

突き抜けてるニッチ

 

この本のいいところは、そのニッチを中途半端で終わらせないところです。ドーナツの穴というテーマも細かいテーマですが、その本も細かいところにこだわってる。

 

本の装丁。カバーが透明なシースルー仕様になってます。

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そしてこれ分かりますかね。この本の右上部分、丸く穴が開いてるんですね。ドーナツの穴だから!

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ばかばかしい・・・

 

これもちろん特別仕様にするためにコストをかけているはずです。

この本の価格は税別1800円。シンプルな装丁にすればもうちょっと安くできたんじゃないかと思うと・・・1800という数字さえも面白く見えてきます。

 

こんな装丁を楽しんだ後、本文に入っていくと、その24ページ、

 

私たちがよく見慣れたドーナツの形は宇宙の形かもしれない。

 

・・・何言ってるんだこの人。

つくづく突き抜けている、これは最後まで付き合わざるを得ません。

 

学問の楽しさを知る

しかしこの本、ただばかばかしいだけではありません。

目次を見ても分かるように、数学、歴史学、哲学など、あらゆる学問の視点からドーナツの穴を「真剣に」考えた本。同じドーナツの穴という研究対象でも、こうも問題提起が違うのか、という世界の切り取り方を楽しめます。

 

そしてそれぞれの道筋で問題を追究する過程が面白い。僕はゴリゴリの文系人間なんですが、図形としてのドーナツ型を研究する「数学」の章では、「こんな考え方があるのか!」と新鮮な驚きがありました。

 

個人的にヒットだったのは「言語学」の章。「穴」という言葉一つとってもあれほどまでに解釈が広がるとは!ドーナツを見る目が変わるような体験ができました。

 

この本は「諸学問の入門書」として、とても優秀な本です。

ぜひ高校生に読んでほしい・・・!!

 実はこの記事でも『失われたドーナツの穴を求めて』を紹介してます。

 

www.chi-shizu.net

 

楽しそうな大人たち

この本は南山大学教授・芝垣亮介さんが主犯となり主導して、協力してくれそうな教授・ドーナツ屋さんを集めて立ち上げた「ドーナツの穴制作委員会」による本です(なんだそれ)。

大のオトナ、しかも超エリートの大学教授たちがこぞって「ドーナツの穴」を研究する。その姿が実にばかばかしく、そして楽しそう。

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芝垣さんに誘われた著者たちは、たいてい担当章の冒頭で「あの人はなにをバカなことを依頼して・・・」と悪態をつきますが、いざ本論に入るとノリノリで議論を進める。

頭のいい人たちの本気の悪ふざけ、大人の青春を見ているようで心地のいい本です。

 

 

 

「ドーナツの穴だけ残してドーナツを食べる」という問いは誰もが悩む、有名なもの。

みんなドーナツの穴に興味はあるけれど、その興味を本として形にした彼らは、理想的な大人です。

 

とりあえずこの本を読めば、「ドーナツの穴」の知識量で日本人の上位1%くらいに入れるんじゃないですか。