おすすめ本まとめ

短歌の初心者でも読みやすい、おすすめ本紹介。

最近、短歌に興味を持つ方が増えている気がします。

とはいえ、短歌はニッチな分野ではあるので、わかりやすいベストセラー!や万人受け!みたいな書籍は少なく、興味を持ってもどこから手を付ければいいのか、、、といったハードルの高さはあるかもしれません。

この記事では、短歌に興味を持ち始めた方に向けて、初心者でも楽しめる短歌の本を紹介します。

どういう本を選ぶか?

短歌を楽しむという目的で書籍を探すなら、まずはやはり歌集という選択肢があげられます。歌集とは要するに「短歌集」で、歌人(短歌を詠む人)の57577の作品がずらっと並んでいる本です。

短歌を読みたい!となれば歌集がシンプルかつコスパよく短歌を摂取できる方法です。

とはいえ、歌集は基本的に一冊につき一人の歌人によって編まれるものなので、小説等と同じくその作品がとことん好みに合わない、のようなリスクはあります。(小説ならこの作家はこんな特徴!とか、あ、これ映画化されてたやつだ!みたいな情報で判断しやすい部分はありますが、短歌はそうもいかないのも少しリスクはありますね)

なので、とにかく短歌を浴びたい!という方、すでに気になる歌人がいる方、一期一会の出会いを楽しむスタンスの方には歌集おすすめです。

もしくは、純粋な歌集ではなく、たくさんの短歌を編纂した短歌アンソロジー的な書籍もあります。僕としては短歌初心者の方はこちらがおすすめです。

メリットとしては、複数の歌人の短歌が収録されているので当たりはずれが少ない、だけでなく、収録されている中でお気に入りの短歌を見つけ、その作者の歌集を追っていく楽しみ方ができる、という点もあります。

さらに、アンソロジーは多くの場合、短歌を並べるだけでなく、その短歌に対する編者の解説も掲載されているのが大きなポイント。短歌は少ない文字数で広い背景を描写する都合、やはり「読み方」「楽しみ方」を知っている知っていないでは大きく差があります。一人では気づけない部分に、「この短歌はこういう読み方ができるんだ」と解説してくれるアンソロジーは、短歌のチュートリアルとして適していると思います。

また、短歌を読みたい、だけでなく、自分でも作ってみたい!という方には、HowTo本、指南書もおすすめ。

短歌の作り方を学べるだけでなく、技法の理解を深めることによって名歌の魅力をより深く味わうことができます。

歌集おすすめ

短歌は歌人の個性がそれぞれかなり反映されるので、初心者に絶対ウケるのはこれ!と言いづらい部分があります。なので以下の僕のチョイスも、あくまで一個人のおすすめとしてとらえていただければ。

万人が共感できるテーマの歌の多さ、歌の理解しやすさ(平易さ)を根拠として短歌初心者におすすめの歌集を選びました。

木下龍也『つむじ風、ここにあります』

つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋がそっと教えてくれる

全部屋の全室外機稼働してこのアパートは発進しない

『つむじ風、ここにあります』木下龍也

短歌界の寵児である木下龍也の第一歌集。

彼の短歌は、誰もが送る日常を新鮮な視点で描写しなおすものが多く、多くの人に支持を受けています。

57577の定型から外れる複雑な歌も少なく、癖がないので、短歌になじみのない人にもスッと理解できるのもポイント。

短歌の魅力をまず感じるうえでは最適な歌集だと思っています。

岡野大嗣『サイレンと犀』

骨なしのチキンに骨が残っててそれを混入事件と呼ぶ日

えっ7時なのにこんなに明るいの? うん、と7時が答えれば夏

『サイレンと犀』岡野大嗣

こちらも比較的若手の売れっ子歌人の第一歌集。

木下龍也と同じく、日常をテーマとした共感のしやすさがある中で、「骨なし~」の歌のように既存の価値観をガラッと裏側から反転してしまうような驚き、面白さが僕は好きです。

死を匂わせるような仄暗い雰囲気も印象的。

笹井宏之『えーえんとくちから』

ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす

拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません

『えーえんとくちから』笹井宏之

26歳の若さで急逝した歌人の歌集。数年前にSNSで話題になっていた覚えがあります。

上二人の共感性の高さとは異なり、この歌人は神秘性の高い歌が特徴。ひたすらに澄んだ世界観を分析するのは難しいですが、あれこれ考えず浸かるように読めるので静かな夜の読書なんかにはお勧めです。

歌集では珍しく文庫本で手に入るのもGoodですね。

穂村弘『シンジケート』

真夜中の大観覧車にめざめればいましも月にせまる頂点

彗星をつかんだからさマネキンが左手首を失くした理由は

『シンジケート』穂村弘

短歌界の第一人者、穂村弘の第一歌集。出版当初、短歌界に衝撃が走ったのだとか。

正直なところ、この歌集は好き嫌いが分かれるという点で、短歌初心者におすすめできるものではないのかもしれません。

というのも、『シンジケート』は幻想的で難解な歌が多く、すべての歌を理解することは困難だからです。軽い気持ちでこの歌集を手にしたら、「うわ、全然意味わからん、やっぱ短歌むっずいわ、、」と敬遠してしまう可能性もあります。

一方、短歌の魅力の一つとして、歌集ごとにその凝縮されたことばによって神羅万象の世界観を堪能できる(小説よりも速く、広く)点があげられると思います。

この点において、この歌集は一冊で広大な、多彩な世界を表現していることで、短歌の魅力を濃縮した形で一気に食らうことができます。

なので、短歌の「凄み」を感じたい方はこの本をはじめに読んでみてもいいかもしれません。

アンソロジー集おすすめ

特に目当ての歌人、歌集がないならアンソロジー形式でお気に入りの歌人を探していく、もしくは一日体験的なノリで楽しむのがいいのでは、と思います。

がっつり見繕うなら前半2冊、緩く楽しみたいなら後半2冊、といったところでしょうか。

中村航 編『桜前線開架宣言』

石川美南、小島なお、雪舟えま、笹公人、黒瀬珂瀾、笹井宏之、中澤系、加藤千恵、木下龍也、光森裕樹――。若い才能が次々にデビューし、いま盛り上がっている現代短歌の世界。その穂村弘以降の全貌を描き出す待望のアンソロジー! 歌人・山田航が40名を撰び、作品世界とプロフィールの紹介に、アンソロジーも付して徹底解説!

ーあらすじ

いわゆる、現代短歌のガイドブック、ともいえる本。今の短歌界はこんな人がいてこんな魅力があってこんな短歌詠んでいます、というガイドがどっさりと載った、「短歌って何から手を付ければいいかわかんない」に対するアンサーのような本です。(これを紹介するためにこの記事書いたまである)

編者の中村航は青年時代、図書館の歌集を端から端まで読み漁りそれぞれのレビューを書き連ねた短歌おたくのような方で、その評は的確かつ重厚。

紹介されている歌人の短歌も手厚く掲載されているので、この本を読めば気になる歌人の一人や二人は見つかるはずです。

瀬戸夏子 編『はつなつみずうみ分光器』

ネットや同人誌の隆盛を背景に、多彩な才能が活躍し、熱くきらめきつづけた20年間。評論や小説でも注目される歌人・瀬戸夏子が選んだ、時代を刻んだ55の読むべき歌集でたどる最先端短歌ガイドにして、待望の現代短歌クロニクル。2000年以降に刊行された重要な歌集の意味・面白さ・読みどころを紹介、加えて代表歌10首を選び出しました。また「ニューウェーブ」「ポストニューウェーブ」など、今日の現代短歌史のキーワードをコラムで論じます。穂村弘以降、必読の若手現代歌人を徹底紹介したベストセラー・アンソロジー『桜前線開架宣言Born after 1970現代短歌日本代表』の姉妹編となるマスト・バイ・アンソロジーがついに登場!

ーあらすじ

『桜前線開架宣言』を受けて、さらに現代の歌集に目を向けた姉妹版。

『桜前線~』とどちらを買うかは割とどっちでもいいと思っていて、表紙やタイトルの気に入った方とか、フィーリングで選んでいいです。

一応違いとしてはこちらの方が現代歌人に厚めですが、割とかぶっている箇所もあります。

穂村弘『ぼくの短歌ノート』

「髪の毛がいっぽん口に飛び込んだだけで世界はこんなにも嫌」。些細な事象で、あっという間に変わってしまう自分と世界の繋がり。道に落ちているものの歌、会社の人の歌、デジタルな歌、殺意の歌etc.時代の光景を言葉ですくい取り、ドラマチックな日常に誘う三十一文字の魔力。人気歌人の短歌読み解きエッセイ。

ーあらすじ

こちらはアンソロジーというより、短歌紹介エッセイ。

一章ごとにテーマが設けられ、テーマにまつわる短歌を穂村弘が紹介する、という形式です。

上二つはしっかりカタログ見て歌人を物色するぞ、といった趣きですが、こちらは文庫本ということもありもっと手軽に楽しめるので、部活体験、は少し気が引けるけどフェンス越しに雰囲気だけ見てみたいな~くらいのノリで手に取れます。おすすめ。

枡野浩一『ドラえもん短歌』

本書は「かんたん短歌」の提唱者として知られ、若者に圧倒的支持を受ける歌人・枡野浩一がネットを中心にでおこなった呼びかけに、全国から続々と寄せられた「ドラえもん短歌」の傑作選です。日本人ならだれもが笑えて共感できる、新・短歌ジャンル「ドラえもん短歌」。単行本版93首に、刊行記念コンテストの入選作から7首を加えた、待望の文庫版。「ドラえもん」× 「短歌」という言葉のひみつ道具を使い、ぼくたちの今の想いを詰め込んだ、22世紀に届けたい決定版です。

ーあらすじ

こちらはさらにライトなアンソロジー、「ドラえもん」をテーマにした歌集です。

僕が好きなところはプロの歌人作ではなく、一般公募で選ばれた作品を掲載している点。技巧や信念も薄い分、肩ひじ張らずに楽しめます。そこに「ドラえもん」という身近なキーワードが必ず入っていますから、読みやすさは随一ですね。

ちなみに選者の枡野浩一さんもかなりの売れっ子歌人です。

指南書おすすめ

短歌を作りたい!という方は「短歌の作り方」みたいな本をはじめに読んでもいいと思います。(僕がそこまで数読んでいないのでたくさんは紹介できませんが、、、)

短歌は知識0で詠める自由さも魅力の一つですが、どういう技法があるか、少しでも学んだ方が言いたいことを言える幅が広がります。

木下龍也『天才による凡人のための短歌教室』

歌人、木下龍也がこれまでの短歌制作の経験から、いくつもの技法・発想法など創作の秘密を伝える短歌教室。開催すれば毎回満席となるこの講義が一冊になりました。短歌をつくるうえでのコツ、ネタの集め方、アイデアの発想法、推敲の過程、多くの読者に届けるための工夫などなど。そもそも短歌って何ですか、という方でも大歓迎です。

ーあらすじ

上で『つむじ風、~』の歌集を紹介した木下龍也による「歌人になるには」をテーマとした短歌指南書。

あまりがちがちではなく、この方法おすすめですよ、僕はこんな感じにやってましたよ、といったユルい語り口。一方で、それじゃあと作歌活動を始めんとする僕らに対しては背中をぐっと押してくれる熱さも感じ、木下龍也の人柄まで楽しめる一冊です。

東直子『短歌の不思議』

短歌の仕組みを名歌に触れながら優しくていねいに解説。豊富な穴埋め問題で実作に触れる。短歌脳になれる一冊!

ーあらすじ

短歌界の重鎮である東直子さんの指南書。こちらは「天才による~」と比較すると短歌に使える技法を丁寧に解説しています。短歌作りの教科書、といっていいでしょう。

練習問題まで完備されている仕様のため、「っしゃあたし短歌やったんで」みたいなモチベ高い方には読み応えのある本になっていると思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

短歌は奥が深く、それでいて意外ととっつきやすい芸術です。

短歌の魅力に触れるため、ぜひ参考にしてみてください。