文学部体験本

文学部志望の必読本③『銃・病原菌・鉄』、史学を学ぶ意義

文学部の講義を体験できるような本を紹介しています。

「文学部志望の必読本」記事まとめ!

文学部には様々な学問が内包されていて、これまで「文芸批評」「言語学」に関する本を紹介しました。

今回は「史学」です。

『銃・病原菌・鉄』。あまりにもハードボイルドなタイトル、僕は一目ぼれでした。

「一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎」という副題のとおり、本書は人類史を扱った本です。

人類史の本といえば 『サピエンス全史』が有名ですが、こちらも大変な名著です。

今回は文学部紹介ということで、「史学を学ぶ意義」がより伝わりやすいこちらを推していきます。

 ひとつの目標

この本には一つの目標があります。

それは、「現在の人種格差は何に由来しているか」を解明すること

人類は長らくヨーロッパ系の人種が覇権を握ってきました。文明をどの大陸よりも発達させ、ほかの地域を侵略し、アフリカやオセアニア地域などを植民地として支配していった歴史もあります。

なぜヨーロッパ系人種にそれができたのか?なぜ逆ではなかったのか?

ある人はその原因を「ヨーロッパ人は能力が優れているから」と説明します。

この本の著者、ジャレド・ダイアモンドは、そのような人種差別につながる考えを否定したい。

そのため、「地理的要因」に焦点を当てて、事実としてある人種格差が決して能力の差に起因しないことを、上下巻・1000ページをかけて証明していきます。

タイトル「銃・病原菌・鉄」は、その主たる要因を象徴したものです。

なぜ歴史を学ぶのか?

このような背景があるので、この本は著者の熱を感じます。ただ読者のために雑学を披露しているのではなく、真摯にメッセ―ジを伝えようとする姿勢が伝わります。

そしてその熱は、そのまま「なぜ歴史を学ぶのか」という問いを考えるヒントになります。

今を知るには過去を知ること。この正しくもどこか響かないフレーズに、大変な質量をもって説得性を持たせてくれたのがこの本です。

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史学もそう。史学科に進学する人は、はたからは「実用性よりも興味関心を優先させた」と思われがちです。しかし史学は役に立たない学問ではない。(いや、こんなのは当たり前ですが、そう思わない人もたくさんいます)

経済学や法学のように目に見えるスキルは身につかないけれど、自分の世界を広げることができます。

そしてそれは文学部全体にも言えます。僕は「文学部は将来の役には立たないけれど、楽しそうだよね!」という言葉を何度も浴びてきました。

そんな時は、「文学部で学んだことは人生の役に立つ」という教授のことばを思い出しています。