小さな男∧静かな声

「小説」が好きな人に、「小説以外」の本を薦めるブログ。趣味も入っています。

【吉田篤弘 おすすめ】吉田篤弘を全力で推す。

 

 


吉田篤弘、という小説家を知っていますか?

 

あまりメジャーな小説家とは言えないかもしれません。

メディアミックスもほとんどないし、芥川賞や直木賞のような大きい賞もありません。

 

ただ、吉田篤弘ホリックの僕としては小説好きで吉田篤弘を知らないなんてもったいない!と思ってしまうので、紹介させてください。

 

 

 

吉田篤弘とは?

 

代表作は『つむじ風食堂の夜』 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』 等。

ストーリーの起伏が少なく、穏やかな街並みに起こる群像劇や、幻想的な世界観が持ち味です。

言うなれば、ミステリや恋愛がテーマパークやイルミネーションだとしたら、吉田篤弘の小説は(店主のこだわりが強い)純喫茶、のようなイメージ。

 

また吉田篤弘は小説家の他に、「装丁家」としての顔も持っています。

妻の浩美さんとともに「クラフト・エヴィング商會」というユニットを組んで、本の装丁の仕事をしています。

例えばちくまプリマー新書の表紙は、全部彼らの装丁だったりします。

 

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吉田篤弘作品の魅力

大人のメルヘン

吉田篤弘の一番の魅力は、「メルヘンチック」だと思います。

彼の作品にはファンタジー調のものから日常を地に行くものまでありますが、いずれも浮世離れしたような幻想感があります。

 

「ここではない、どこかへ」といったキャッチコピーがありますが、吉田篤弘作品には僕らの日常を濾過して、喧騒やいざこざのないどこか違う場所へ連れていくような(いかないような)、そんな魅力があります。

 

フワフワと不思議で心地いい読書体験、それを終えるとなんというか、ディズニーランドから帰ってきたような、夢から覚めた感覚を味わいます。

 

サンリオ的なピンクの綿あめみたいなメルヘンじゃなくて、静かで暗いんだけど、何かがキラキラしている、そんな感じの大人のメルヘンです。

 

それをさせるのは彼の掴みどころのない文体と、登場人物たちの暮らしぶりにあるのかなと思います。

彼らの人生はなんとも穏やかで、刺激が少なく、落ち着いています(小説によっては壮大な事件に見舞われる登場人物もいるんですが、それでも穏やかに見えるんですよね。精神が凪というか)。

そして思えば、吉田篤弘作品の登場人物には「会社員」がほとんど出てこない

食堂の主人だったり、大学教授だったり、電球交換屋さん、ラジオパーソナリティーなど、どの作品でも彼らのほとんどが個人事業主(的な仕事)。

会社というものを書かずに、世界を「個」の集まりと描く事で、現実とは違う幻想感が生まれているのかなとも思います。

 

 

根底に潜む寂しさ

そしてもうひとつの魅力、それは「寂しさ」です。

吉田篤弘の作品にはどれも根底に寂しさが流れている

絶望、とか暗い、とかそんな感じじゃないんですけど、登場人物も明るい人も静かな人も様々なんですけど、どこかみんな寂しさを心に抱えている。

先程述べた、「個」の集団としての世界観も関係ないしているのかも知れません。

登場人物は基本「独り」。それぞれ友人もいるし会話もあるけれど、その存在を前提としていないというか、「二人一組」みたいなのがないんですね。「独りが集まってる」ような。

それを文章として顕在化させるわけでもなく、ただ背景としてある。

その寂しさが、夜の読書にピッタリと寄り添ってくれる時があります。

 

おすすめ本7選

定番 『つむじ風食堂の夜』

吉田篤弘の入門としてまず無難なのがこの1冊。

ページ数も少なく、世界観もシンプルなのでとっつきやすいです。それでいて吉田篤弘の魅力がこれでもかと詰まった傑作。

ハマる人はこれでハマるはず、これが受け付けなかったら吉田篤弘に縁はないかな、といえる本です。

 

濃縮された世界観『圏外へ』

内容(「BOOK」データベースより)

主人公は、「カタリテ」と名乗る小説家。書き出しで行き詰まり、書き続けることができなくなってしまう。そんななか、小説内の登場人物が、痺れを切らして「蝙蝠」に変身しながら新たな話を始めてしまったり、“南の鞄”という謎の巨大鞄から生まれた、過去形で予言をする「ソボフル」なる人物の壮絶な半生が突如語られ始める。一方、ようやく「語り」を再開させることになった「カタリテ」は、自らの作品世界に入り込んだ後、南を目指し、“エッジ”という名の作中人物や作家たちが集う奇妙な療養所に妻とともに辿り着くのだが―。

(これは1冊目として勧める本ではないんですが……)

吉田篤弘の幻想世界をギュッと詰めた本がこれ。

正直好みは分かれますが、未知の読書体験をしたいならすごくオススメです。どこか安部公房に通ずる雰囲気。(吉田篤弘の一部の小説は安部公房と親和性があると思ってます、個人的に。)

僕は一回目はワケが分からなかったですが、その不可解さが忘れられず、もう一度読み直してどハマりしました。

少なくとも、これを読んで「何も残らなかったな」という感想を抱くことは絶対に有り得ない、と断言できます。

 

夜のお供に『小さな男*静かな声』

内容(「BOOK」データベースより)

百貨店の寝具売場に勤めながら百科事典の執筆に勤しむ“小さな男”。ラジオのパーソナリティで、日曜深夜一時からの生番組に抜擢されたばかりの三十四歳の静香。“小さな男”と“静かな声”、交互にあらわれる二人の語り手から、ささやかな日々のいとおしさが伝わる物語。

 

ささやかな日々のいとおしさが伝わる物語。

ボクが1番好きな本。

500ページ程の厚い本です。

これは一気読みをするというよりは、ちまちまちまちま、時間をかけて、夜の寝る前に嗜む感じ。

「小さな男」と「静かな声」の二人の登場人物が何気ない日常をただ過ごす、静かで穏やかな本です。ああ、好き……

衝撃的読書体験!というよりも、生涯そばに置いておきたい、と思える本です。

 

静かなショート・ショート『という、話』

内容(「BOOK」データベースより)

私たちは、いろいろなところで本を開く。電車で、ベッドで、公園のベンチで、縁側で、喫茶店で、お風呂で…。なぜそこで本を読んでいるのか、何を読んでいるのか、何を感じているのか。そこには、ひとつひとつ異なる物語がある。そしてもちろん、開いた本の中にもまた別の物語があるだろう。フジモトマサルが描いた読書の風景から吉田篤弘が紡いだ物語が24。星空を眺めるごとく味わえる物語集。

 

フジモトマサルさんの挿絵が魅力的な読書にまつわるショートショート。

星新一のようなSFチックなものとは異なり、「小咄」って感じ。プラスにもマイナスにも振れないけど、なんか好きだなー。というか。

ちなみに僕は、

本は人よりもずいぶん長く生きるーー。

という文が入った一編が好きです。

 

浸れるエッセイ 『京都で考えた』

内容(「BOOK」データベースより)

答えはいつもふたつある。京都の街を歩きながら「本当にそうか?」と考えたこと―。

吉田篤弘はエッセイも多く書いているのですが、その特徴は「エッセイなのか、小説なのか分からない」というところにあります。

彼の書くエッセイは日常を描いているにもかかわらず、やはりどこか幻想的で、唯一無二の味を出しています。

その中でも『京都で考えた』はおすすめの一冊。クラフトエヴィング商會の装丁も併せて楽しんでください。

 

ディズニー的ファンタジー『ブランケットブルームの星型乗車券』

内容紹介

ようこそ、毛布をかぶった寒がりの街へ
クラフト・エヴィング商會の作家による、ここではない、どこかの街の物語。

本好きのための酒屋「グラスと本」、
別れについて学ぶ「グッドバイ研究所」、
春の訪れを祝う「毛布を干す日」……。
寒い季節にぴったりの、ブランケットで包まれたような温もりいっぱいの一冊。

 

この本は架空の街「ブランケットブルーム」の新聞記者が書く連載コラム、という設定で作られたものです。

吉田篤弘作品の特徴、「ここではない、どこかへ」が如実に表れている一冊で、まさに夢のような読書体験を与えてくれる、大人のファンタジー。

 

クラフトエヴィングの世界観『ないもの、あります』

内容(「BOOK」データベースより)

よく耳にするけれど、一度としてその現物を見たことがない。そういうものがこの世にはあります。たとえば「転ばぬ先の杖」。あるいは「堪忍袋の緒」。こういうものは、どこに行ったら手に入れられるのでしょうか?このような素朴な疑問とニーズにお応えするべく、わたくしどもクラフト・エヴィング商會は、この世のさまざまなる「ないもの」たちを、古今東西より取り寄せて、読者の皆様のお手元にお届けします。文庫化にあたり、新たに3品を加えました。

クラフトエヴィング商會に興味がある方はこちら。

架空の商店・「クラフトエヴィング商會」の商品カタログ。

「青巻紙」や「堪忍袋の緒」など、ウィットに富んだ商品を眺めて空想にふけるのもいいですね。

 

最後に

もちろんほかにも伝えたい魅力や紹介したい本はたくさんあるんですが、とりあえずここまでにして、あとは出来れば吉田篤弘の本をいったん手に取って読んでみてください。

これは完全に贔屓目が入ってますが、吉田篤弘の小説を読まないで人生を終えるなんて勿体ないと思います、切実に。