文学部に入って得だなと思ったのは、いろんな種類の芸術作品に触れられたことです。
僕自身は本と日本語が好きで、小説をたくさん読みたくて文学部に入りました。
けど、
絵画、映画、演劇、写真、舞踏、テレビ、、、
文学部には本以外にも楽しい芸術にアクセスできる環境があるのはうれしい誤算でした。
短歌に触れたのも大学が初めて。
僕が受講した講義の教科書を紹介します。僕が短歌を好きになったきっかけの本です。
『短歌の不思議』。
著者は東直子。『回転ドアは、順番に』 『とりつくしま』 などの著書がある歌人です。
この本、一言でいうと、『短歌の詠み方を学ぶ本』。短歌に使われるテクニックを紹介して、短歌での表現方法を習得する本です。
各章ごとにテーマが分かれていて、それぞれ見本と、練習問題が掲載されています。
読破をする頃には、57577で世界を表現するための一通りの技術は備わっているという寸法。
つまり「短歌の教科書」的な本なわけですが、勘違いしてほしくないのがこの本、「短歌がもっとうまくなりたい人」に向けた本じゃありません。「短歌に今まで触れてこなかった人」が読むべき一冊です。
どういうことかというと、この本の最大の魅力は「短歌を知らない人が短歌を好きになれる」本なんです。
というのは、この本、それぞれの技法を紹介する際の例として収録された短歌がめちゃくちゃ多いんですよね。
ひとつの技法につき10首くらい持ってきて解説してくれる。ほらこれも!こんなパターンも!みたいに。
それをあらゆる技法ごとにやってくれるので、日本中の秀逸な短歌が一冊の中に集結している、短歌図鑑のように仕上がっているんです。
つまりこの本、短歌の魅力を学ぶついでに、自分で詠むためのイロハまで身につく、何とも贅沢な短歌本なんです。
この記事でもちょっと言及していますが、「エモい」という言葉が市民権を得ている昨今、限られた言葉から世界観を想起させる短歌ははまる人多いんじゃないかと思うんですよね。
文学部に興味を持てる人なら、いろんな芸術に触れなければもったいない。
芸術のひとつ「短歌」をかじるには、『短歌の不思議』はうってつけだと思います。