川上未映子

芥川賞作家・川上未映子のおすすめ本まとめ!各作品の見どころ解説

川上未映子さんの著作を読んだことはあるでしょうか。

日本を代表する女性作家なので、読んだことはなくても名前は聞いたことがあると思います。

この記事では川上未映子の作品をこれから読む人に向けて、おすすめの作品をご紹介します。

川上未映子とは?

川上未映子は1976年生まれの小説家。

歌手活動を経て、2007年に『わたくし率イン歯ー、または世界』で作家デビューします。

翌年2008年には『乳と卵』芥川賞を受賞

その後も『ヘブン』で芸術選奨文部科学大臣推薦賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞など、新作を出せば賞をとる、稀代の天才作家です。

ちなみに旦那さんはこちらも芥川賞作家の阿部和重さんです。

川上未映子の魅力

僕の考える川上未映子作品の魅力は2つあります。

それは、

  • 芸術品的な文章
  • 突きつけられる気迫

です。

①芸術品的な文章

「芸術的」ではなくあえて「芸術品的」としたのは、

川上未映子が書く文章の一つ一つがそれぞれ独立した一つの作品のように異彩を放っているんです。

特に初期の作品に顕著なんですが、読点が延々と続く口語体を煮詰めたような文章が敷き詰められ、まるで川上未映子の個展を鑑賞している気分になります。

十一月のお終いからさかのぼること十日間、黄色の折りたたみ式の携帯電話をずっと使っていて、ふだんなんともおもっていないところ、本体と液晶画面をつなぐところ、関節的なあの部分を保護している黒い部分が、まるで紙が机からはらりと落ちるような感じで音もなく割れて、コードがむき出しになってしまい、それにはからだのなかの骨とかすじとか脳幹とか、いったいそれらがどんな形状をしているのか想像もつかないけれど想像上のそれらを見るような静かな興奮があるのだからじっと見て、飽きて、ちょっとひっぱってみたら画面がぱたりと黒くなり、またいじると二回くらい点滅して、それからまもなくこときれた。

『発行地帯』川上未映子、p127

そのため初期の作品は好き嫌いが分かれます。

『乳と卵』『わたくし率イン歯ー、』の感想をネットで検索してみると、「文章が受け付けない」といった感想がちらほら見受けられます。

②突きつけられる気迫

川上未映子のもう一つの魅力はその気迫にあると思います。

川上未映子の小説はエンタメ性あふれる展開はありませんが、登場人物が思いを爆発させるクライマックスが特徴的です。

数ページにもわたる登場人物の激白は読者である僕らにも突き刺さり、呼吸もできなくなるほどの迫力があります。

総じて、川上未映子の作品は

好き嫌いは分かれるものの、読んだ人に強いインパクトを残す作品です。

おすすめ作品

①『乳と卵』

第138回芥川賞・受賞作品。現代の樋口一葉の誕生!
初潮を迎える直前で無言を通す娘と、豊胸手術を受けようと上京してきた母親、そしてその妹である「わたし」が三ノ輪のアパートで過ごす三日間の物語。三人の登場人物の身体観と哲学的テーマが鮮やかに交錯し、魅惑を放つ!

芥川賞を受賞した川上未映子の代表作。

関西弁で書かれた生々しい文章は好みが分かれますが、ハマる人はのめりこんでしまいます。

「豊胸手術」をめぐり、失った「女性」を取り戻そうとする母と、これからやってくる「女性」に嫌悪感を持つ娘の衝突。

この関係から「女性の一生」を考えさせられる一冊です。

②『わたくし率イン歯ー、または世界』

人はいったい体のどこで考えているのか。それは脳、ではなく歯―人並みはずれて健康な奥歯、であると決めた“わたし”は、歯科助手に転職し、恋人の青木を想い、まだ見ぬ我が子にむけ日記を綴る。哲学的テーマをリズミカルな独創的文体で描き、芥川賞候補となった表題作ほか一編を収録。著者初の小説集。

なんか気持ちの悪いタイトルですが、中身もタイトル通り不気味な雰囲気が漂っています

冴えない女性が妄想力で自分だけの世界を作り出す。それを邪魔するものは彼女の周りには誰もいません。

物語の終盤、妄想の城がぶっ壊されて現実に連れ戻された彼女に注目です。

③『すべて真夜中の恋人たち』

<真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。
それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思い出している。>
入江冬子(フユコ)、34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手な彼女の唯一の趣味は、誕生日に真夜中の街を散歩すること。友人といえるのは、仕事で付き合いのある出版社の校閲社員、石川聖(ヒジリ)のみ。ひっそりと静かに生きていた彼女は、ある日カルチャーセンターで58歳の男性、三束(ミツツカ)さんと出会う・・・。

あまりにも純粋な言葉が、光とともに降り注ぐ。
いま、ここにしか存在しない恋愛の究極を問う衝撃作。

濃密な恋愛小説。

自我の持たない三十路の女性が紳士的な男性に惹かれる物語。

孤立したふたりが誰にも見られていない空間で、ただ静かに過ごす時はいつ崩れてもおかしくなく、終始苦しい読み心地です。

④『あこがれ』

おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。クラスの人気者ではないけれど、悩みも寂しさもふたりで分けあうとなぜか笑顔に変わる、彼らは最強の友だちコンビだ。麦くんをくぎ付けにした、大きな目に水色まぶたのサンドイッチ売り場の女の人や、ヘガティーが偶然知ったもうひとりのきょうだい…。互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす物語の幕が開く。

小学生2人の成長を描いた中編小説。

「聡明でありながら思春期真っただ中の小学生」という超王道キャラ設定に、川上未映子の天才的な観察眼が光ります。

この小説はとにかく書き出しが神がかってて、それだけでも電子書籍のサンプルとかで読んでほしいです。。。!

⑤『ヘヴン』

“わたしたちは仲間です”―十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える“僕”は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞ダブル受賞。

いじめられっ子2人が互いに慰めあって、いじめを乗り越えようとする物語。

この小説はニーチェの「ルサンチマン」の考えがベースに見られ、いじめっ子による「強者の理論」にもスポットが当てられているのがポイントです。

よくある「いじめ」を題材にした小説とは一線を画した深みがあります。

ラストの描写はハッピーエンドにもバッドエンドにも見られ、読者自身の考えが浮き彫りになりそうです。

⑥『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』

純文学会の気鋭として注目を集める著者は、一体何を感じ、見つめ、考えてきたのか。瑞々しい感性と卓越した表現で綴られた、がむしゃらな日常に湧き起こる喜怒哀楽と問いの数々。共感と驚嘆が詰まった、愛らしくて滑稽で深遠な百三十六本を収録。芥川賞作家のデビュー随筆集、初文庫作品。

以下三冊はエッセイ。

本作は川上未映子が小説家デビュー前にブログに記していた日記を書籍化したものになります。

こちらも『わたくし率イン歯ー、』と同様、タイトル通りの文章が中に詰まっていて、好みが分かれる本です。

加えて読者を想定していない分、より癖が強く、ぶっちゃけ半分くらいは解読不能です。

しかしながら、そのぐちゃぐちゃな文章が作者の脳内を覗いているような気分にさせられ、中毒性を呼ぶ不思議なエッセイ。

おすすめです。

⑦『すべてはあの謎に向かって』

見上げる雪空に響く賢治のことば。文豪「ドス」を貫く心揺さぶる「ラズ」の力。たらい回しにされるおばさんクレーマーの心中と、怒髪天を衝いた新幹線車内の衝撃。小説家の日常は諸事ぐるぐる渦巻いてやがてあの謎へむかう…。オロモイ!からロマンティックまで、週刊新潮人気連載を厳選したエッセイ集。『ぜんぶの後に残るもの』『人生が用意するもの』を合本化し改題したオリジナル文庫。

こちらはわりと最近書かれたエッセイ集で、独特な文章のアクが抜けた非情に読みやすいエッセイ

それでなお天才的な観察力、洞察力は健在で、質の高い一冊になっています。

この人、よくこんな些細な感情の動きを記憶してるな、、、と感心します。

⑧『きみは赤ちゃん』

35歳で初めての出産。それは試練の連続だった!つわり、マタニティーブルー、分娩の壮絶な苦しみ、産後クライシス、仕事と育児の両立…出産という大事業で誰もが直面することを、芥川賞作家の観察眼で克明に描き、多くの共感と感動を呼んだ異色エッセイが待望の文庫化。号泣して、爆笑して、命の愛おしさを感じる一冊。

最後は出産・育児エッセイ。

子供を産み、育てるまでに感じた苦労や喜びの数々をすべて、本当にすべて書きだしたエッセイで、出産を控える女性はもちろん、それを支える男性も必読の一冊です。

川上未映子はこれまでの創作やエッセイで、「頼まれてもないのに子供を産んでしまう親のエゴ」をたびたび書いてきました。そんな彼女が自分の子供と対面して何を思うのか。ここが最大の見どころです。

おわりに

川上未映子は割と好みが分かれる作風ですが、いずれにせよ読んでみれば評価の高さは納得できると思います。

まずは癖の少ない『すべて真夜中の恋人たち』『あこがれ』あたりからいかがでしょうか。