卒論がつらい。不安だ。そんなあなたに『ヘンな論文』感想

卒業論文は大学生最後の試練。

テーマが全く決まらない、、、!!

どうにも書き進められない、、、!!

そんな大学生の方も多いと思います。

僕自身も学生時代、卒論テーマに苦悩した思い出がありますが、そんな時にヒントになったのがこの本、『ヘンな論文』でした。

卒論を書き進めている大学生、今から構想を練る大学生にオススメする本です。

ヘンな論文たち

『ヘンな論文』

著者は国語学者・兼お笑い芸人のサンキュータツオさん。

どういう本かと言えば、そのまんま、「ヘンな論文」を集めた本です。

それこそ学生が卒業論文として作成したものもあれば、一流の研究者が人生を賭して書き上げた大作まで。

  • 男が浮気するとき、どんな言い訳をするのか?
  • あくびはなぜ移る?
  • おっぱいの揺れとブラのずれの関係

等。

くだらない。でも、確かに気になる。。。

論文の内容自体も面白く、実際にタメになることも多いんですが、一番印象的だったのは「みんな研究を楽しんでいる」ということ。

調査の徹底ぶりや本文の言葉遣いの端々から、「俺はこんなにこいつのことが好きなんだぜ!!」という研究対象への愛がヒシヒシと伝わるんですね。

以下、『ヘンな論文』で紹介されている論文を2つご紹介します。

①女子高生と「男子の目」

秘密の花園・女子高が「共学化」によって男子の目にさらされたとき、JKはどう変わるのか?を研究した論文。

研究方法は2種類です。

まず一つがアンケート

純粋な女子校生と女子校在学中に「共学化」を経験した半女子校生にそれぞれ学生生活に関するアンケートを取りました。

その結果、

  • 共学女子のほうが日常的に化粧をする割合が高い
  • にもかかわらず、「おしゃれは男性の目を気にしてするものではない」

つまり、共学女子は「男子の存在に無自覚なまま女性らしさを高めている」!

という論理を展開します。

もう一つは資料調査

女子校時代と共学時代のそれぞれの卒アル・集合写真を比較し、変化を分析します。

卒アル分析では、

  • 女子校時代より共学後時代のほうが女子の笑顔が多い!(65%⇒72%)
  • 女子校時代より共学後時代のほうがウェーブヘアが多い!(3%⇒9%)
  • 女子校時代より共学後時代のほうが体を少し傾けて写る女子が多い!

という面白い結果に。

体の傾け方なんて知らんがな、と思いますが執筆者によると「ぶりっこ化」の表れだとか。なるほど。。。

また、共学化した元・女子高の集合写真を分析すると、体育祭の写真ではやけに男子のみの写真が多い、合唱コンクールでは女子だけのおしとやかな写真が多い、という指摘も。

執筆者はここからジェンダー規範の表れを指摘しています。

筆者の結論としては、「ジェンダー規範に囚われず築いた社会性の芽を、共学化によって摘まれてしまうのが嘆かわしい」というもの。

ただの私見ではなく、データとして説得性を持たせているところに論文らしさが感じられます。

②「面白さ」の解明

「笑い」に関する論文も紹介されています。

「なぞかけ」を題材として、人はどんななぞかけを面白いと感じるのか?を研究した論文。

「笑いのセンスは人それぞれ」のように、曖昧に片付けられてしまう「笑い」の原理ですが、

論文の執筆者はどのような方法で研究したのか?

彼は以下の方法をとります。

  1. 学生57人になぞかけを作ってもらう。
  2. 別の学生17人にその面白さを判定してもらう。
  3. 面白さ、つまらなさの理由を分類化する。

単純ながら、まあ妥当な方法。

「理由の分類化」というのは、例えば「共感性」「納得性」「わかりにくさ」「当たり前」など、その理由を点数化して分類する感じです。

ここから執筆者が導いた結論は、「面白さには意外性とわかりやすさのバランスが大事」。

イメージ通りの結論ですが、統計をとってイメージ通りの結論を導いたのが何より大事で、「よくわからんけど多分こうじゃね?」とみんなが思ってることを、データで証明してあげることが論文の大きな役割なわけです。

論文内の別の調査で「おもしろいなぞかけほど理解するのに時間がかかる」という考察もされていて、なかなか楽しい論文です。

おわりに

『ヘンな論文』で紹介されているしょうもないテーマの論文を見ていると、論文ってこのくらい自由でいいんだな、という気持ちになります。

論文はつまり「自分の主張を論理的に証明する」ことで、「○○って絶対こうじゃない!?絶対そう思う!」という内なる思いをぶつけるものなのかなと考えました。

気晴らしに読むにもちょうどいい本なので、ぜひ手に取ってみてください。