『怯まず前へ』東洋大・酒井駅伝監督のチーム育成論

酒井監督が本を書いた

箱根駅伝という晴れ舞台で、長らく主役の一校となっている東洋大学

第96回ではまさかの9位に沈んでしまいましたが、前年まで11年連続総合3位以内という快挙を達成している強豪校、真面目な学生像と1秒を削り出す走りに魅せられる駅伝ファンも多いです。

かくいう僕もその一人。柏原の激走を観てから10年来の東洋びいきです。

そんな僕が本屋で見つけたのがこの本。

酒井監督の書いたこの本、東洋ファン、駅伝ファンなら必読の一冊でした。

必読ポイントはこの3つ!

  • 鉄紺流チーム作り
  • 三大駅伝の裏話
  • 歴代東洋ランナーとの思い出話

見どころ①鉄紺流・チーム作り

箱根駅伝初優勝の翌年から監督に就任し、その手腕で東洋大を確固たる強豪校に作り上げた酒井監督。

この本では酒井監督がどのように強豪・東洋大を作り上げてきたかが語られた、鉄紺流チーム作り論です。

僕が特に面白いと思ったのは次の箇所。

寮内に生け花、熱帯魚を飾る

⇒選手たちの癒しになるという効果のほかに、世話の必要な生き物を置くことで人任せにしない責任感を育む、という目的もあるそうです。

 

チャンスは平等に与える

⇒酒井監督はチーム全員に目を行き届かせる、努力を重ねた末の開花を大切にする、ということを常に意識しているそうです。有名な「同じ実力なら下級生を使う」という起用方針も「下級生にもチャンスを与える」という考え方からです。

名前が下がる起用はしない

⇒大学までではなくて実業団でも活躍してほしい、という酒井監督の思いから。選ばれなかった悔しさを次に生かしてほしい、という願いがあります。

4年生で努力が実を結びエース格に成長した定方駿を外した時も、同様の発言をしていました。

 

見どころ②三大駅伝の裏話

大学駅伝ファンにとって垂涎ものの内容なのが、出雲・全日本・箱根の三大駅伝の裏話です。

柏原の遅れを全員でカバーし優勝した2011出雲駅伝。

設楽啓太を5区に配置した2014箱根駅伝。

エース不在の中、下級生中心で挑んだ2018箱根駅伝。

それぞれの大会でどのような意図で采配したのか、どんな思いでレース展開を読んでいたのか、他校の情勢をどう分析していたのか、贅沢に書かれています。

まさに東洋版・「もう一つの箱根駅伝」のようなボリューム感です。

見どころ③歴代選手たちの思い出話

酒井監督の口から語られる「選手たちの思い出話」が多いのも東洋ファンにとってはうれしい点です。

柏原、設楽兄弟、服部兄弟、相澤などのスター選手はもちろん、「この人も出てきた!」と感動してしまうようなバラエティある豊富さ。

  • 柏原のライバル・田中貴章や川上遼平の存在の大きさ。
  • 基礎の徹底と努力を続け、金栗杯を獲得した大津翔吾。
  • 個性的で性格のいい集団だった服部弾馬世代。
  • 頑張りすぎる性格のためケガをしたときに唯一叱った高久龍。
  • 新生世代のアンカーを激走し次代の希望を感じさせた小笹涼。

 

ほぼ全世代の選手について「この選手はこうだった」「この選手はこんな性格だった」と述べられていて、酒井監督と選手の絆が垣間見える内容です。

駅伝ファン必読の一冊

『怯まず前へ』は東洋大ファン、駅伝ファンなら必ず買って損のない一冊です。

大エース相澤や今西・定方が卒業し苦しいシーズンになりますが、来期の東洋大も楽しみですね。